この記事では、2026年のB2B決済に影響する9つのトレンドと、財務の仕組みを見直すときの進め方がわかります。共通する流れは、AIによる自動化が決済・不正対策・資金管理の意思決定に広がり、財務担当者の役割が「作業をする人」から「ルールを決める人」へ移っていくことです。
※サービス提供状況:グローバル口座(外貨口座)、海外送金・両替、法人カード、経費管理、請求書支払い、会計ソフト連携は、日本法人向けには現在提供準備中です。海外法人の場合は、法人の所在国・地域と審査条件により利用できる場合があります。日本法人が現在ご利用いただけるのはオンライン決済です。
2026年のB2B決済で押さえたいトレンドは?
注目すべきトレンドは、AIによる自律的な財務業務、決済へのAI活用、エージェント型コマース、AIによる不正対策、ステーブルコイン、従量課金、決済の組み込み、BNPL、生体認証決済の9つです。以下、順に説明します。なお、一部は海外の動向で、日本でそのまま同じ速度で広がるとは限りません。
1. 財務部門で自律型の業務が現実になる
AIエージェント(人に代わって作業を進めるAI)を財務業務に使う動きは、小規模な試行から実運用に近づきつつあります。複数のエージェントが社内規程を読み、情報を処理し、常時監督されなくても必要な対応を判断する、という形です。
一方で、世界の企業の3分の2はAI活用を本格展開できていないという調査もあります。買掛金、売掛金、入金照合、為替管理などの手作業をAIに任せるチームと、従来の方法を続けるチームとの差は、今後広がる可能性があります。
これから財務責任者に求められるのは、実務そのものよりも、システムが守るべき管理上のルールを設計する役割です。
Airwallexは、資金管理、承認、決済経路の選択、為替エクスポージャー(為替変動で損益が動くリスク)を扱うエージェントを開発しています。その入り口となるAI Assistantは、通貨口座の開設や決済手段の有効化などを、希望を伝えるだけで代行する機能です(通貨口座など日本法人向けは提供準備中)。
2. 決済の裏側でAIが動く
決済の経路選択、失敗した決済の再試行、不正確認などを、AIが取引ごとに判断する仕組みが広がっています。カード会社の傾向や地域ごとの特徴、コストを学習して最適化するため、固定ルールより柔軟に対応できます。
期待される効果は、承認率(決済が通る割合)の向上、不要な本人認証の減少、正当な取引を誤って断ることの減少です。「正当な顧客に手間をかけず、不正だけを止める」という、加盟店の長年の課題に効く可能性があります。
Airwallexの「Optimize 360」は、取引ごとに決済経路、認証の流れ、再試行の方法、トークン(カード番号を置き換えた代替の番号)の使い方を評価し、初回の成功率を高める機能です。
3. AIエージェントが消費者や企業に代わって購入する
AIエージェントが利用者に代わって商品を探し、購入まで完了する「エージェント型コマース」は、まだ初期段階ですが急速に広がっています。McKinseyは、2030年までに米国のB2C小売だけで、エージェント主導の購入により最大1兆米ドルの売上が生まれる可能性があると見ています(海外の例)。
同じ動きは企業間取引にも及ぶ可能性があります。仕入先の調査、価格比較、支払いの開始までをAIエージェントが担い、調達担当者は「エージェントが守る条件」を設定する仕事へ移ります。GEPの調査では、64%の組織が今後3年以内に、調達とサプライヤー管理のためにエージェント型AIへ投資する計画です。
4. AIによる不正対策が最前線になる
不正対策は、AI同士の攻防になっています。ディープフェイク(AIで作った偽の映像や音声)が本人確認を欺き、偽の身元情報が基本的な確認をすり抜け、生成AIで偽サイトが大量に作られています。
そのため、固定ルールだけでなく、行動や取引の背景情報をリアルタイムで分析する適応型の仕組みへ移る財務・リスク管理チームが増えています。最終判断は人が行うとしても、攻撃の量と速さを考えると、AIの支援は欠かせません。
日本のEC事業者にとっても他人事ではありません。経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」は、原則すべてのEC加盟店に2025年3月末までのEMV 3-Dセキュア(カード利用時の本人認証)の導入を求めました。2025年4月以降は、セキュリティ・チェックリストに記載の対策(脆弱性対策など)の実施も求めています。
Airwallexの不正検知エンジンは、行動や状況のデータをもとに、すべての取引をリアルタイムでリスク評価する機能です。
5. ステーブルコインの利用は続くが、企業の本格採用は限定的
ステーブルコイン(法定通貨と価値を連動させた暗号資産)は、2026年も注目が続きます。2024年の取引額は約15兆6,000億米ドルで、Visaの年間取引額に近い規模でした。
国際送金の速く安い手段として期待されていますが、利点はまだ確定していません。受け取る側が現地通貨を必要とする場合、為替コストは下がりません。法定通貨への換金コストが銀行間の為替より高くなることもあり、企業間の多くの資金移動では価値が限られます。日常の決済に組み込むには、簡単に換金できることが前提になります。
すでに使われているウォレットや決済網の中にステーブルコインが組み込まれれば、状況は変わり得ます。それまでは、利用が増えても企業の本格採用は限られる、というのが私たちの見方です。
6. ソフトウェアの課金が利用量に合わせて変わる
AIやAPI(ソフトウェア同士をつなぐ仕組み)を中心にした製品では、利用量が一晩で変わったり、1時間単位で急増したりします。利用者数に応じた固定の料金では、実際の利用量を反映しにくくなっています。
そのため、利用量に応じた従量課金や、固定料金との組み合わせを採用する企業が増えています。ただし、財務チームには、利用量の計測、地域ごとの価格差、クレジット(前払いの利用枠)、複数通貨にまたがる売上の管理といった新しい負担が生じます。こうした負担を減らせる基盤を選ぶことが、課題になります。
7. SaaSや業界特化型サービスに決済が組み込まれる
決済は、後から付け足す機能ではなくなりつつあります。代金の受け取りから支払い、カード発行、入金照合までを自社サービスの中で完結させるプラットフォームが増えています。利用者は1か所で財務を管理でき、事業者は利用量に応じて伸びる収益を得られます。
サービスに決済機能を組み込むと、利用者は画面を離れずに請求書の発行、代金回収、仕入先への支払い、残高管理を行えます。決済が日常業務の一部になるため、他のサービスへの切り替えもされにくくなります。
AirwallexのPayments for Platformsは、金融機関にならなくても、カード発行、支払い、照合の機能を自社サービスへ組み込める仕組みです。
8. BNPLがB2Bやサブスクリプションへ広がる
BNPL(後払い・分割払いサービス)は、ファッションや家電だけでなく、食品配送、旅行予約、中価格帯のサービスにも広がっています。B2Bでは、年間プランを分割で払えるようにするSaaS企業が増える可能性があります。月払いは、顧客が年間費用の一括負担をためらう場面で商談を進めやすくし、調達の承認で案件が止まることを防ぐ場合があります。
買い手は自社の資金繰りに合う支払条件を求め、売り手は承認待ちで案件を失いたくありません。融資枠を交渉し直さずに費用を分散できる方法は、双方に利点があります。特に欧州では規制の整備が進んでおり、事業者は貸し手に近い対応を求められるようになっています(海外の例)。
9. 生体認証決済が次の段階へ進む
指紋、顔、虹彩、声、手のひらの静脈を使った認証による決済が試されています。中国など一部の市場ではすでに使われています。
2026年は、旅行、イベント、カフェ、スタジアムなど、速さが重視される場所で導入が進む可能性があります。加盟店には、会計の手間を増やさずに、カードやウォレットと並べて生体認証決済も受け付けられる体制が求められます。
財務の仕組みを見直すにはどう進める?
見直しは、ツールの統合から始め、効果が分かりやすい業務にAIを入れ、新しい決済手段を小さく試す順に進めるのが現実的です。具体的には次の5つです。
ツールを統合する: 分断されたシステムは業務を遅らせ、AIが学習するために必要なデータのつながりも損ないます。決済、為替、カード、照合を連携した仕組みにまとめると、継ぎはぎを繰り返さずに拡張できます。
AIを使う業務を早めに導入する: 入金照合、経費の分類、不正リスクの評価など、効果が見えやすい業務から始めます。定型作業をAIに任せ、人は判断が必要な業務に集中します。
現地の決済網を使う: 現地の決済ネットワークは、従来のコルレス銀行(海外送金で間に入る銀行)経由より速く、コストも低くなる場合があります。海外に事業を広げるなら、決済のタイミングを予測できる仕組みが必要です。
規制変更に備える: 欧州では、PSD3(決済サービスに関する新しいEUの規則)が2026年に導入される予定で、AMLA(EUのマネーロンダリング対策当局)による監督の一元化やBNPLの規制強化も進んでいます(海外の例)。規則が変わるたびに手作業で作り直さずに済む仕組みを選びます。
新しい決済網を小さく試す: 銀行口座間で直接支払う口座間決済(A2A)の小規模な試行や、管理された環境でのステーブルコインの試験により、本格的に普及する前に仕組みを理解できます。
基盤を早めに見直したチームは、より速く動き、統制を保ったまま事業範囲を広げられます。古い仕組みを使い続けるチームは、追いつくために時間を費やすことになります。
よくある質問
2026年のB2B決済で最も影響が大きいトレンドは何ですか?
AIの活用です。決済の経路選択、不正対策、資金管理など、複数の領域で自動化が進み、財務担当者の役割が実務からルール設計へ移ると考えられています。
日本のEC事業者は不正対策で何をすべきですか?
経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」は、EMV 3-Dセキュアの導入を2025年3月末までに求め、2025年4月以降はチェックリスト記載の対策の実施も求めています。まずは自社がこれらに対応できているかを確認してください。
ステーブルコインは企業間の国際送金に向いていますか?
現時点では限定的です。受け取り側が現地通貨を必要とする場合は為替コストが残り、換金コストが銀行間の為替より高くなることもあるためです。組み込みが進むまでは、小規模な試験から始めるのが現実的です。
BNPLはB2Bでも使われますか?
使われ始めています。年間プランを分割払いにできるSaaS企業や、支払条件を柔軟にしたい調達の場面で広がる可能性があります。
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Ross Weldon
Contributing Finance Writer
Ross is a seasoned finance writer with over a decade of experience writing for some of the world's leading technology and payments companies. He brings deep domain expertise, having previously led global content at Adyen. His writing covers topics including cross-border commerce, embedded payments, data-driven insights, and eCommerce trends.


