AIはチームに何ができるかは変えたが、組織の構造はそのままだ
AIエージェントはバグを選別し、コードを生成し、修正を本番環境にリリースできます。2024年には実験的に感じられたこの能力が、2026年には誰もが持つ当たり前のものになっています。AIで強化されたチームとそうでないチームの差は、多くの人が予想したよりも速く消えつつあります。
しかし、企業の対応を見てみると、3年前と同じ組織図、同じ引き継ぎの流れ、同じ役割定義にAIを後付けしているだけです。エンジニアはコーディング支援ツールを手に入れました。プロダクトマネージャーは要約ツールを使うようになりました。それでも組織図は変わっていません。報告ラインも動いていません。
先を行く企業は、これまでの制約がなくなった今、組織内でどのように仕事が流れるべきかを根本から問い直しています。
ジェットエンジンを搭載しながら、馬を手放せていない
デザインの世界に「スキューモーフィズム」という概念があります。新しい技術が、それが置き換えた古い技術を模倣してしまう現象です。2007年にiPhoneが登場した際、最初のアプリ群はまさにこれでした。メモアプリは黄色い罫線入りのメモ帳に見え、電卓は卓上電卓そのものでした。スマートフォンが、独自のルールを持つ新しい表現の場だと、デザイナーたちが気づくまでに何年もかかりました。
Airwallexポッドキャストのある回で、シャノン・スコットは、プロンプトだけで非エンジニアが本番稼働するソフトウェアを構築できるプラットフォーム「Anything」のCEO、ドルブ・アミンと対談しました。ドルブは、企業がAIに合わせて組織化する方法にも同じパターンを見出しています。強力な新しいエージェントが与えられても、最初の本能はそれを古いワークフローに当てはめることです。12個のブラウザタブを開き、各エージェントを監視しながら作業を完了させ、従来のPM→デザイナー→エンジニアという引き継ぎの連鎖をそのままなぞろうとする。
従来のモデルは一直線に進みます。プロダクトマネージャーが仕様を書き、デザイナーがモックアップに落とし込み、エンジニアが実装し、QAがテストする。引き継ぎのたびに遅延が生まれ、その遅延のたびに文脈が失われていきます。
20人規模のAnythingでは、そうした引き継ぎが消えはじめています。以前はカスタマーサポート担当者がSlackでバグを報告し、エンジニアがログを調査し、問題を診断し、修正をリリースするのを待っていました。今では、その担当者がエージェントに連絡するだけです。エージェントがバグを選別し、コードベースを調査し、修正の初稿をリリースする。それもエンジニアがチケットを開く前に完了していることが多い。サポート担当者がエンジニアになったわけではありません。「問題を報告する」と「問題を解決する」の境界が、単純に消えたのです。
自然言語で指示するだけでソフトウェアを作れる「バイブコーディング」について、ドルブはこう語ります。
「バイブコーディングはいずれ普通のコーディングになると、ずっと言い続けてきました。長い間、コーディングはスタンフォードを卒業し、アプリのアイデアを実現するためだけにベンチャーキャピタルを調達しなければならない、不思議な聖職者階級のようなものでした。それが変わりつつあります。」―ドルブ・アミン、Anything CEO
ボトルネックは移動しているのに、ほとんどのチームは気づいていない
長年にわたって、ソフトウェア開発における最大の制約はエンジニアリングのキャパシティでした。どの企業もアイデアの数が実行能力を上回っていました。バックログは常に積み重なっていました。答えはいつも「エンジニアをもっと採用する」か「優先順位をより厳しく絞る」でした。
AIはその制約を吹き飛ばしました。バックログはもはや、コードを書ける人数によって制限されていません。そして、それが新たな、目立ちにくい問題を生み出しています。
より多くの人が本番環境に貢献できるようになると、調整は難しくなります。エージェントはいくらでも展開でき、24時間365日常に稼働しているのが魅力です。しかし、何を構築すべきかについて人間の認識をそろえることは、依然として骨の折れる作業です。ドルブが言うように、エージェントはいくらでも持てます。しかし、人間を調整することが依然として本当の制約です。ロードマップについて全員の認識をそろえることは、以前より楽になっていません。
顧客の期待も、この課題をさらに難しくします。ソフトウェアの開発コストが下がると、「良い」製品の基準は全体的に上昇します。1人の創業者が今では週末でリリースできるものを、5年前のスタートアップは四半期かけても完成させられませんでした。この変化は、あらゆる企業の競争のあり方を変えます。
これを的確にとらえている企業は、別の問いを立てています。これはまさに核心を突く問いです。「開発が速くなったいま、空いた人の力をどこに注ぐか?」多くの場合、答えは商品の差別化・顧客理解・販路にあります。いずれも、判断力が唯一無二の要素となる領域です。
そして、ほとんどのチームがまだ向き合っていない問いが近づいています。ドルブはうまく表現しています。「ユーザー自身がエージェントになる世界で、どうプロダクトと体験を設計しはじめるか?」顧客のAIエージェントが御社のソフトウェアを操作する存在になると、体験設計の議論全体が変わります。
問題を知っている人が、解決策を自ら構築できるようになった
この動きの根底で起きている価値のシフトは、立ち止まって考える価値があります。数十年間、コードを書く能力はテクノロジーのボトルネックスキルでした。コードが書ければ構築できた。書けなければ、書ける人を雇う必要がありました。
その方程式が逆転しました。いま希少なのは、その分野の知識です。特定の業界や業務のなかで、長年かけて積み上げてきた知識のことです。「バイブコーディング」は一般消費者の現象になっています。ツールは今や、適切なシステムと適切な道具立てに包まれれば、非常に実質的な成果を上げられる段階に来ています。
採用代理店を経営する中小企業オーナー、複数法人の資金繰りを管理する財務担当者、輸送の問題がどこで発生するかを10年かけて学んだ物流コーディネーターを想像してみてください。こうした人たちは常に、より良いソフトウェアへのアイデアを持っていました。今では、エンジニアを一人も雇わずに、そのアイデアを動く業務システムに変えられます。
こうしたビジネスの参入障壁は、知識そのものにあります。コードはコピーできます。しかし、知識はコピーできません。採用代理店がどう回るのか。どの段階で候補者の連絡が途絶えるのか。どの報酬体系が誤ったインセンティブを生むのか。地域ごとに、どのコンプライアンス要件が新規参入の壁になるのか。——こうした10年分の理解は、まねできないのです。
ドルブは、Anythingの200万人のユーザー全体でこの傾向を見出しています。最も成功しているのは、問題について深い専門知識を持つ人たちです。消防士から不動産、金融まで、必ずしも技術系の創業者である必要はなく、その専門知識に基づいてソフトウェアを構築できるようになっています。外部委託した開発者が仕様書から読み取った理解ではなく、自らの知識が形になるのです。
「誰もが同じバズーカを手に入れて、自社のビジネス課題を解決しに行っています。これは、あなたの会社の組織構造を根本から問い直す、もしかするとインターネット以来最大の機会かもしれません。」―ドルブ・アミン、Anything CEO
御社の組織図こそが、前進を阻んでいるものだ
すでにツールは導入済みです。問題は、御社の組織がいまだに「エンジニアリングこそボトルネック」という前提で組まれていないか、という点です。
このエピソードでは、シャノンとドルブが次のテーマを掘り下げています。AIでプロダクトチームのつくり方はどう変わるのか。なぜ多くの企業は、いまだに古いワークフローにAIを上から重ねるだけなのか。そして、エンジニアだけでなく現場の専門家が直接リリースできるようになると、何が変わるのか。

多くの企業では今日、財務チームが社内ツールのアイデアを持っていても、6ヶ月待ちのIT部門の案件リストを経なければなりません。カスタマーサポートは製品の問題に気づいても、開発の作業リストに紛れて消えていく「要望チケット」でしか伝えられません。このギャップを埋める手段はすでにあります。しかし、ほとんどの組織はまだそれを活用できる形に変わっていません。
Airwallexでは、すでにそのシフトが起きています。エンジニア以外のチームが、自分たちの業務に合った社内ツールを構築し、問題に最も近い人たちが設計した解決策で他社製のソフトウェアを置き換えています。
アーリーアダプターのコストは現実にありますが、縮小しています。ドルブは現在の状況を半導体時代に例えています。処理能力が急速に伸び、コンピュータにできることが何度も塗り替えられた時代です。AIも同じような曲線をたどっており、数ヶ月ごとに能力の飛躍が構築可能なものを広げています。「適切なタイミング」を待つことは、ますます根拠のない前提になっています。
このシフトに合わせて構造を適応させる企業は、そうでない企業よりも速く前進します。ツールはここにあります。制約はもはやテクノロジーではありません。御社の組織図が時代に追いついているかどうか、それが問われているのです。
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The Airwallex Editorial Team
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