海外送金の為替手数料を比較する際に知っておきたい、為替リスクの種類や原因、事業への影響を解説します。先物為替予約、ヘッジ、多通貨口座などを使った対策も紹介します。
この記事の要点
為替リスクとは、為替レートが変動し、企業の最終的な利益に影響するリスクです。
為替リスクの軽減に役立つ方法には、先物為替予約、ヘッジ戦略、多通貨口座などがあります。
Airwallexのようなフィンテック企業は、多通貨ソリューションや予約換算を通じて、為替リスクを簡単に抑える方法を提供しています。
米国企業が欧州から商品を輸入しているとします。ユーロが米ドルに対して上昇すると、同じ輸入品に対して、米ドルでより多く支払う必要があります。事業を世界各地で展開していれば、複数通貨を扱うことで、さらに大きな為替変動にさらされる可能性があります。外国為替は日々変動するため、仕入原価も日によって変わります。この変動が為替リスクです。
為替リスクは通貨リスク、為替変動リスクとも呼ばれ、企業の収益性と財務の安定性に影響します。海外送金の為替手数料を比較するときも、表示された手数料だけでなく、適用レートや為替変動による最終的な支払額まで確認することが重要です。ここから、為替リスクが発生する原因と、その影響を抑える方法を説明します。
為替リスクとは
為替リスクとは、為替レートの変動によって、企業の取引や資産の価値が変化するリスクです。
たとえば、米国企業が欧州から商品を輸入する場合、ユーロが米ドルに対して上昇すると、商品は割高になります。反対にユーロが下落すれば、商品は割安になります。こうした変動によって金銭的な利益または損失が生じるため、リスクを理解し、管理することが重要です。
海外で事業を行う企業は、商品、サービス、投資の代金を外貨で支払うことが少なくありません。為替が不利な方向に動けば、コストが増え、利益率が下がり、長期的な戦略判断にまで影響します。そのため、為替リスクやその他の海外取引手数料を抑える対策が必要です。
為替リスクを最小限に
為替リスクの主な3種類
取引リスク
取引リスクは、取引を完了するために、ある通貨を別の通貨へ換算するときに生じます。たとえば、米国企業が欧州の顧客へ10万ユーロで商品を販売する契約を結んだ場合、契約締結から入金までの間に米ドルとユーロの為替レートが変わると、受取額が想定を下回る可能性があります。利益率が下がり、財務の安定性も損なわれかねません。先物為替予約や予約換算などを利用してレートを固定すれば、変動へ備えられます。
経済リスク
経済リスクとは、為替レートの変化によって生じる潜在的な損失または利益です。変動は企業の競争力に直接影響します。たとえば、現地通貨の上昇により海外市場でのコストが増えると、現地企業との競争で不利になり、市場シェアや将来収益が減る可能性があります。経済リスクは管理が比較的難しいものの、事業を複数市場へ分散し、慎重に価格を設定することが対策になります。
換算リスク
換算リスクは、為替変動によって財務報告の数値が変わるリスクです。海外子会社を含む財務諸表を連結するときに発生します。各社の財務諸表が異なる通貨で作成されている場合、本国通貨へ換算する際のレートによって価値が変動します。
たとえば、英国に子会社を持つ米国企業が、英国子会社の利益をポンドで計上しているとします。ポンドが米ドルに対して下落すると、米国の連結財務諸表上、英国事業の利益は小さく見えます。換算リスクはキャッシュフローへ直接影響しませんが、財務報告や投資家の評価に影響する可能性があります。
為替レートが変動する原因
国際決済や国際取引では、常に有利なレートを確保できるわけではありません。為替変動を完全になくすことはできませんが、原因を知れば準備しやすくなります。
GDPやインフレなどの経済状況
為替変動は、GDP(国内総生産)やインフレなど、その国の経済状況に左右されます。経済が堅調であれば、安定性と成長への投資家の信頼が高まり、一般に通貨も強くなります。ある国のGDP成長率が貿易相手国より高ければ、通貨が上昇し、輸出品は割高に、輸入品は割安になる可能性があります。これは世界市場で事業を行う企業に大きく影響します。
選挙や政策変更などの政治的出来事と不安定化
政治的な出来事や不安定化は、通貨価値を突然、予測困難な形で変化させます。選挙、政策変更、地政学的緊張が代表例です。政治スキャンダルや政権交代で投資家の信頼が低下すれば、その国の通貨が売られる可能性があります。貿易紛争や制裁も国際貿易を混乱させ、為替レートを即座に大きく動かすことがあります。
金利調整などの中央銀行政策
中央銀行の政策も為替変動へ大きく影響します。利上げは海外からの投資を呼び込み、通貨高につながる場合があります。利下げは国内消費と投資を刺激する一方、通貨を下落させる可能性があります。海外事業を支えるために外貨建て融資を利用している場合、突然の利上げで返済負担が増えることがあります。
パンデミックや自然災害などの世界的事象
大規模な世界的事象は、サプライチェーンを混乱させ、消費需要を減らし、経済の不確実性を高めるため、為替レートへ強く影響します。新型コロナウイルス感染症の流行時には、ロックダウンや経済刺激策を背景に多くの通貨が大きく変動しました。貿易量と投資資金の流れが変わり、通貨が急騰または急落しました。
投機と取引活動
金融機関による投機や取引も、為替レートの予測を難しくします。トレーダーや投資家は市場心理と予想に基づいて判断することが多く、経済・政治的事象の影響を増幅させる場合があります。その結果、通貨価値が急速に、ときには合理的な根拠を超えて変動します。
為替レートが事業へ与える4つの影響
1. 輸入価格への影響
自国通貨が外貨に対して下落すると、輸入する商品やサービスの費用が上がります。生産コストが増え、利益率が圧迫される可能性があります。反対に自国通貨が上昇すれば、輸入コストが下がり、収益性が改善することがあります。
2. 輸出価格への影響
自国通貨が上昇すると、海外市場では自社商品が割高になり、競争力が下がる可能性があります。販売量や市場シェアの低下につながりかねません。一方、通貨安は輸出品を割安で競争力のあるものにし、需要と売上を増やすことがあります。急な変動で価格とコスト構造が変わるため、計画や予算の策定が難しくなります。
3. 海外資産の価値への影響
海外に資産を保有している場合、その価値は為替レートに応じて上昇または下落します。たとえば、本国通貨が米ドルで、ユーロ建て資産を保有している場合、米ドルが上昇すると、その資産を米ドルへ戻したときの価値は下がります。
4. 海外旅行費用への影響
為替変動は、訪日・訪国外国人旅行の双方に影響します。ある国の通貨が下落すると、海外からの旅行者には割安になり、現地の観光産業を後押しします。一方、海外旅行を扱う事業では、現地通貨の上昇によって顧客の旅行費用が増え、予約と売上が減る可能性があります。
事例:為替リスクが事業へ与える影響
クラフトビール醸造所を経営し、ドイツから高品質なホップを仕入れているとします。3,000ユーロ分を購入し、30日後に支払う契約です。契約時のレートは1ユーロ=1.15米ドルで、支払見込額は約3,450米ドルです。
ところが30日後、ユーロが上昇し、1ユーロ=1.20米ドルになりました。同じ3,000ユーロ分の仕入れに3,600米ドルが必要です。レートが0.05変動したことで、150米ドルの追加費用が発生しました。
項目 | 契約時 | 30日後 | 影響 |
|---|---|---|---|
仕入額 | €3,000 | €3,000 | 変化なし |
為替レート | 1 EUR = 1.15 USD | 1 EUR = 1.20 USD | ユーロが米ドルに対して上昇 |
支払額 | US$3,450 | US$3,600 | US$150増加 |
150米ドルは小さく見えるかもしれません。しかし利益率の低い醸造所にとっては、マーケティング、新しい設備、健全なキャッシュフローの維持に使う予定だった資金が、同じ商品の支払増に充てられることになります。
予測しにくい変動は将来の費用や収益の見通しを難しくし、長期投資にも慎重にならざるを得ません。そこで多くの企業は、現在のレートを固定し、市場変動の影響を抑えるヘッジなどの為替リスク管理を利用します。将来の仕入額を安定させ、財務結果を予測しやすくできます。また、品質が高く価格競争力のある商品を提供し続ける助けにもなります。
為替リスクを抑える方法
海外事業では、為替変動によって安定したキャッシュフローの維持が難しくなります。ただし、適切な手段を使えば、急な通貨変動の影響を抑えられます。
先物為替予約
先物為替予約は、将来の為替レートを固定する契約です。将来の指定日に、一定額の通貨を固定レートで売買すると、今の時点で約束します。市場変動による想定外の支出を避け、コストを安定させられます。Airwallexなど一部のフィンテック企業は、従来の銀行より柔軟で、前払額も少ない予約換算のような仕組みを提供しています。
例: 30日後にドイツから3,000ユーロ分のホップを購入します。本日、1ユーロ=1.15米ドルでレートを固定する先物為替予約を結び、3,450米ドルで3,000ユーロを購入します。今後30日間にレートがどう変わっても、商品到着時の支払額は3,450米ドルです。
メリット: 支払額が確定し、予算と財務予測を立てやすくなります。将来の為替変動に伴う不確実性を減らし、長期計画も立てやすくなります。
デメリット: 為替が有利に動いても、契約したレートが適用されます。契約時に少額の手数料や上乗せ費用がかかる場合もあります。
ヘッジ戦略
ヘッジでは金融派生商品を使い、為替変動による潜在的な損失を抑えます。代表的な手段は先物、オプション、スワップです。通貨先物は、先物為替予約と同様、将来の指定日に通貨を売買する契約ですが、規制された取引所で取引されます。通貨スワップは、ある通貨の元本と利息の支払を、別の通貨の同等の支払と交換するもので、長期的なリスク管理に役立ちます。
例: 通貨先物でリスクをヘッジし、30日後に1ユーロ=1.15米ドルで3,000ユーロを購入する契約を結びます。実勢レートが1.20に上がれば、先物契約を使い低いレートでユーロを購入できます。実勢レートが下がれば、市場レートで購入する選択ができます。
メリット: 為替が不利な方向に動いた場合の大きな損失から守られます。先物は規制された取引所で取引されるため、安全性も高まります。
デメリット: ヘッジは複雑で、管理に金融知識が必要な場合があります。取引手数料や証拠金も必要になることがあります。
ナチュラルヘッジ
ナチュラルヘッジは、より簡単で費用を抑えやすい方法です。輸入と輸出で扱う通貨を一致させ、互いの影響を相殺します。ある通貨で原材料を輸入し、同じ通貨で完成品を販売すれば、為替リスクを自然に抑えられます。綿密な計画が必要で、事業モデルに合わないこともありますが、複雑な金融商品を使わずにリスクを管理できます。
例: ドイツからユーロでホップを輸入し、ドイツの販売会社にもビールを販売してユーロで代金を受け取ります。ユーロが上昇すると輸入コストは増えますが、輸出の受取価値も増えるため、影響を相殺できます。
メリット: わかりやすく費用を抑えやすい方法で、金融商品や契約の代金を支払う必要がありません。
デメリット: 特に複数通貨を扱う場合、受取・支払通貨を常に選べるとは限りません。輸出入戦略に合わない場合もあります。
多通貨口座
外貨リスクを管理する最も簡単な方法の一つが、多通貨口座です。1つの口座で複数通貨を受け取り、保有し、支払えるため、すぐに通貨換算をする必要がありません。通貨間の資金移動も容易で、有利なレートを提供する口座もあります。
例: 米国企業が金融機関またはフィンテック企業で多通貨口座を開設します。ドイツの販売会社から受け取ったユーロを、ホップの仕入先へ支払うまでユーロのまま保有できます。米ドルへ換算してから再びユーロへ戻す費用を避け、換算が必要なときまで、より有利なレートを待つこともできます。
Airwallexなどは、多通貨口座、法人カード、決済処理を1つのプラットフォームへ統合しています。多様な決済手段で複数通貨の代金を回収し、同じ残高から海外の仕入先へ支払えます。為替手数料を比較する際は、こうした換算回数を減らせる仕組みも含め、総コストで判断する必要があります。
メリット: 1つの口座で複数通貨を管理しやすくなります。換算手数料や海外取引手数料を節約でき、換算時にはより有利なレートを利用できることがあります。
デメリット: 換算する時期を決めるには、為替レートを引き続き確認する必要があります。ただし、複雑な契約やヘッジを管理しなくても、いつでも低い銀行間レートを利用できる口座もあります。
Airwallexが関税と為替変動への対応を支援する方法もご覧ください。
Airwallexで為替リスクを簡単に管理
多通貨ソリューションと予約換算を1つのプラットフォームで
適切な金融パートナーを選べば、為替リスクを抑えながら海外事業を拡大できます。Airwallexビジネス口座なら、従来の銀行で為替リスク管理を始める際の複雑な要件に対応することなく、海外からの入金と海外への支払を行えます。
Airwallexビジネス口座では、次のことができます。
60以上の国・地域で、現地の銀行口座情報が付いた現地通貨口座を開設する。
受け取った通貨を換算せず、直接ウォレットへ入金する。Airwallex Paymentsと組み合わせれば、クレジットカード、デジタルウォレット、銀行振込など多様な手段で、180以上の国・地域から決済を受け付ける。
多通貨残高から、現地の決済網または法人カードを使って仕入先の現地通貨で支払い、海外取引手数料と換算手数料を節約する。
複数通貨で資金を保有し、為替変動リスクを抑える。
60以上の取引通貨と銀行間レートを利用し、必要なときだけ換算する。
総換算額の5〜10%を前払いするだけで、確定レートによる換算を事前に予約する。この機能は現在、世界の各市場へ順次展開中です。
仕入先への支払でも顧客からの入金でも、Airwallexは為替リスクを抑えながら海外展開する企業を支援します。
グローバルな資金を管理
為替リスクに関するよくある質問
通貨リスクと為替リスクの違いは何ですか
通貨リスクとは、ある通貨の別の通貨に対する価値の変動によって生じる潜在的な損失または利益です。為替リスクは、レート変動だけでなく、キャッシュフロー、利益、企業全体の財務健全性への影響も含みます。つまり為替リスクは、通貨リスクを構成要素の一つとして含む、より包括的な概念です。
海外事業を行う企業にとって、為替リスクが重要なのはなぜですか
為替変動は想定外の財務結果を生み、企業の健全性に影響します。欧州から商品を輸入する米国企業は、ユーロが米ドルに対して急上昇すると支払額が増え、利益率が低下する可能性があります。為替リスクを管理すれば、キャッシュフローを安定させ、利益と長期的な財務健全性を守れます。
通貨リスクのヘッジで一般的に使われる手段は何ですか
先物為替予約、先物、オプションが代表的です。先物為替予約は将来取引のレートを固定し、確実性を高め、リスクを抑えます。取引所で売買される先物は同様の保護を提供しますが、より標準化され、流動性があります。オプションは、一定期間内に指定レートで通貨を売買する権利を与えますが、義務ではありません。スワップやその他の金融派生商品も利用できます。
小規模企業は外貨リスクをどう管理できますか
Airwallexのような金融サービス提供者と連携して外貨を管理する方法があります。Airwallexビジネス口座では、60以上の国・地域で現地の銀行口座情報が付いた通貨口座を開設できます。
為替レートの変動に影響する要因は何ですか
金利などの経済指標、政治的安定、市場心理が影響します。金利が高い国には海外投資が集まり、通貨が強くなる場合があります。政治的安定や、貿易協定・財政措置などの政府政策も影響します。投資家の信頼や世界的事象に左右される市場心理により、レートが突然、予測困難な形で動くこともあります。
免責事項
ここに記載された内容は情報提供のみを目的としており、法務、規制、税務、投資に関する助言を構成するものではありません。読者は、それぞれの状況に応じた助言について、自らのアドバイザーまたは専門家へご相談ください。
著者情報
Airwallex編集チーム
Airwallex編集チームは、オーストラリア、アジア、北米、欧州を拠点とする、企業財務とフィンテック分野のライターによるグローバルチームです。財務、テクノロジー、決済、スタートアップ、中小企業にわたる深い専門知識を持ち、Airwallexのプロダクトチームや業界リーダーを含む専門家と緊密に連携してコンテンツを制作しています。
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