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Published on 31 August 20263分

AI時代に向け、財務データ基盤をゼロから再構築

Pranav Sood
Airwallex 最高財務責任者(CFO)

AI時代に向け、財務データ基盤をゼロから再構築

AIを前提に財務部門を変革するには、強固なデータ基盤が欠かせません。

Airwallexの事業は複雑です。お客さまが世界各地で資金を受け取り、保有し、両替し、送金し、支出できるサービスを提供しています。こうした一つひとつの活動から、細かな取引記録が連続して生まれます。例えば1件の売上だけでも、お客さまの支払額、カードネットワークからの入金額、Airwallexの手数料、事業者の受取額がそれぞれ記録されます。複数の市場で発生する数百万件もの取引と、各事業者固有の処理慣行を掛け合わせれば、データ管理の難しさは明らかです。

財務チームの目標は、細部に埋もれることなく、事業で何が起きているのかを理解できる状態をつくることです。そのためには、全体像を一貫した説明として示しながら、必要に応じて詳細まで掘り下げられるよう、個々の記録を統合する必要があります。

Airwallexはここ数年で大きく成長しました。2018年に500万米ドル未満だった年間換算売上高は、現在では13億米ドルを超えています。この成長段階では、データの統一よりも正確性を優先してきました。数値が正しく、厳しい検証にも耐えられることへの確信が必要だったからです。各プロダクトの責任者が、それぞれのデータ構造の定義について最終判断を担っていました。しかし、これらを統合する全体構想がなかったため、事業全体でデータが分断され、定義にもばらつきが生じました。

この1年、私たちはBigQueryからDatabricksへの大規模なデータ移行を進めてきました。これを、データ基盤をゼロから見直す機会と捉えました。世界共通の構想、明確な責任の所在、適切な管理体制に基づいて再構築し、事業の長期的な成長を支えられる基盤を整えました。

データ移行を財務部門主導で進める

私たちは、データ移行を財務部門主導で進めるという、一般的とはいえない方法を選びました。データ部門やエンジニアリング部門に任せるのではなく、財務部門が必要な利用場面を特定し、下すべき意思決定から逆算して、それを支えるデータを定めました。技術面では、Airwallexの勘定台帳をレポート作成モデルの土台に据えることを推進しました。世界共通で認識でき、信頼できる基盤が必要であり、照合済みの勘定台帳が最も確かな起点だったからです。

財務部門が「唯一の正しい情報源」を管理する

財務部門の中でも、必要とするデータは機能ごとに異なります。税務、資金管理、経理・財務統制、FP&A(財務計画・分析)の各チームには、それぞれ明確な要件と望ましいデータ構造がありました。こうした異なる視点を一つの定義にまとめる作業は難易度が高い一方、部門横断の連携が大きな成果を生んだ取り組みでもあります。ほかの財務チームにも、特に参考にしてほしい点です。

私たちは、すべての項目と指標を説明するデータ辞書を作成し、用語を統一したうえで、各データをどのテーブルに格納するかを合意しました。さらに、基幹システム(ERP)の勘定科目表に多くの列を追加し、データへのタグ付けや情報の付加を行えるようにしました。当時は明確な要望がなかった項目も、今では後続のさまざまな業務で活用され、AIに関するすべての取り組みを支える土台になっています。

このデータセットは現在、事業全体における「唯一の正しい情報源」です。財務部門がその管理を担うことで、単に結果を報告する組織から、意思決定に影響を与える組織へと変わりました。部門をまたぐ議論に必要な時間も短縮されています。

整備されたデータが、AIに必要な文脈を与える

財務部門でAIを実用化するには、整備され、適切に管理されたデータが不可欠です。私たちのContext Hubを参照するAIエージェントは、各項目が事業上どのような意味を持つかを学び、独自の解釈ではなく、私たちの定義に基づいて推論します。

この取り組みの効果は、すでに増減分析に表れています。先月EMEAで営業費用が変動した理由を説明するために、勘定台帳を開き、タグを追い、比較を手作業で組み直す必要はなくなりました。分析担当者がCursor、Claude、Hex上で動くAIエージェントに質問すれば、変動要因が整理された形で返ってきます。基礎データが整い、文脈も定義されているため、私はその結果を信頼し、意思決定に活用できます。

もちろん、データ基盤の整備は一度で終わるものではありません。既存の問題をすばやく解決して、新たな問題に対応する余地をつくり続ける作業は、テトリスのように感じることがあります。事業が成長すれば、現在のデータ構造には収まらない、新しく複雑なデータも生まれます。それでも、基盤そのものが存在しない状態とは、直面している課題の性質がまったく異なります。

財務データは機密性が高く、AIに扱わせるべきではないという財務責任者の声を聞くことがあります。しかし多くの場合、より大きな問題はセキュリティではなく、AIを活用する準備が整っているかどうかです。データが分断され、定義が統一されず、適切に管理されていなければ、AIが出す結果を信頼することは困難です。

Airwallexで進めてきたこの基盤整備により、私たちはAIを活用した変革へ自信を持って投資できます。財務部門のあり方を再設計していくうえで、継続的に発展させられる土台が整いました。

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Pranav Sood
Airwallex 最高財務責任者(CFO)

Pranav SoodはAirwallexの最高財務責任者(CFO)として、同社の次の成長フェーズを牽引する一翼を担っています。Bain & Company、GoCardless、Airwallex、Bain Capitalで戦略、オペレーション、投資に携わった経験を持ち、現代の財務リーダーシップについて、戦略と事業の両面を踏まえた独自の視点を備えています。

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