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Published on 31 August 2026•3分

AI活用に向けた財務データ基盤の作り方

Pranav Sood
Airwallex 最高財務責任者(CFO)

AI活用に向けた財務データ基盤の作り方

AIを財務業務で使うには、データが統一され、定義が共通で、管理者が決まっている基盤が必要です。データが分断されていると、AIの出した結果を信頼して意思決定に使えません。この記事では、Airwallexの財務チームが財務データ基盤をゼロから作り直した経験と、他の財務チームが参考にできるポイントを紹介します。

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財務のAI活用に、なぜデータ基盤が必要?

AIは、整理され、適切に管理されたデータがあって初めて、信頼できる結果を出せます。データが分断され、定義がバラバラなままでは、結果が正しいかを判断できません。

Airwallexのお客さまは、世界各地で資金を受け取り、保有し、両替し、送金し、支出します。そのたびに細かな取引の記録が生まれます。たとえば1件の売上でも、お客さまの支払額、カードネットワークからの入金額、Airwallexの手数料、事業者の受取額がそれぞれ記録されます。複数の市場で発生する数百万件もの取引に、事業者ごとの処理の違いが加わり、データ管理は難しくなります。

財務チームの目標は、細部に埋もれずに、事業で何が起きているかを理解することです。全体像を一貫した説明として示しつつ、必要なときは詳細まで掘り下げられるよう、個々の記録を統合する必要があります。

Airwallexは成長の過程で、データの統一よりも正確性を優先してきました。各プロダクトの責任者が、自分のデータ構造の定義を決めていたため、全体をまとめる構想がなく、事業全体でデータが分断され、定義にもばらつきが生じました。

この1年、BigQueryからDatabricksへの大規模なデータ移行を進める中で、この基盤を見直す機会と捉え、世界共通の構想、明確な責任の所在、適切な管理体制のもとで再構築しました。

データ移行を、なぜ財務部門が主導した?

財務部門が必要な使い方を特定し、下すべき意思決定から逆算してデータを定めるためです。一般的にはデータ部門やエンジニアリング部門に任せることが多いなかで、あえて財務部門が主導しました。

技術面では、Airwallexの勘定台帳を、レポート作成の土台に据えました。世界共通で認識でき、信頼できる基盤が必要であり、照合済みの勘定台帳が最も確かな起点だったからです。

「唯一の正しい情報源」はどう作った?

財務部門の各チームの要件を1つの定義にまとめ、財務部門がその管理を担いました。税務、資金管理、経理・財務統制、FP&A(財務計画・分析)の各チームには、それぞれ必要なデータと望ましい構造がありました。

具体的には、次の取り組みを行いました。

  • 項目と指標をすべて説明するデータ辞書を作り、用語を統一しました。

  • 各データをどのテーブルに格納するかを合意しました。

  • 基幹システム(ERP)の勘定科目表に列を追加し、データへのタグ付けや情報の付加を可能にしました。当時は要望がなかった項目も、いまでは後続のさまざまな業務で使われ、AIの取り組みを支えています。

このデータセットは、いまや事業全体の「唯一の正しい情報源」です。財務部門が管理することで、結果を報告する組織から、意思決定に影響を与える組織へと変わりました。部門をまたぐ議論に必要な時間も短くなっています。

整備されたデータは、AIにどう役立つ?

AIが、自社の定義にもとづいて推論できるようになります。Airwallexの「Context Hub」を参照するAIエージェントは、各項目が事業上どんな意味を持つかを学び、独自の解釈ではなく、Airwallexの定義で答えを出します。

効果は、増減分析に表れています。先月EMEA(欧州・中東・アフリカ)で営業費用が変動した理由を調べるために、勘定台帳を開き、タグを追い、比較を手作業で組み直す必要はなくなりました。分析担当者がAIエージェントに質問すれば、変動要因が整理されて返ってきます。基礎データが整い、文脈も定義されているため、その結果を信頼して意思決定に使えます。

データ基盤の整備は一度で終わりません。事業が成長すれば、現在の構造に収まらない新しいデータも生まれます。それでも、基盤がない状態とは、直面する課題の性質がまったく違います。

財務データは機密性が高く、AIに扱わせるべきではないという声もあります。しかし多くの場合、より大きな問題はセキュリティではなく、AIを使う準備が整っているかどうかです。データが分断され、定義がそろっていなければ、AIの結果を信頼するのは困難です。

この基盤があるから、AIを活用した変革に、自信を持って投資できます。財務部門の業務のあり方を見直していくうえでも、この基盤の上に積み上げていけます。

財務チームが参考にできるポイントは?

この経験から言えるポイントは3つです。

  1. 使い方から逆算する: 財務が下したい意思決定を先に決め、それを支えるデータを定めます。

  2. 定義を統一し、財務が管理する: 用語と項目の定義をデータ辞書にまとめ、部門横断で合意します。

  3. 整備を続ける前提で始める: 事業が変われば、新しいデータも増えます。一度で完成させようとせず、継続的に発展させられる土台を作ります。

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よくある質問

財務データ基盤の整備は、どこから始めればよいですか?

まず、財務が下したい意思決定と、それに必要なデータを整理します。そのうえで、用語と項目の定義をデータ辞書にまとめ、データの置き場所を合意します。

なぜ財務部門が管理するのですか?

財務部門が「唯一の正しい情報源」を管理すると、部門をまたぐ議論の時間が短くなり、結果を報告するだけの組織から、意思決定に影響を与える組織へと変わるためです。

財務データをAIに扱わせても大丈夫ですか?

機密性を心配する声はありますが、多くの場合、より大きな課題は、データが分断され、定義が統一されていないなど、AIを使う準備が整っていないことです。データが整っていなければ、AIの結果を信頼するのは困難です。

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Pranav Sood
Airwallex 最高財務責任者(CFO)

Pranav SoodはAirwallexの最高財務責任者(CFO)として、同社の次の成長フェーズを牽引する一翼を担っています。Bain & Company、GoCardless、Airwallex、Bain Capitalで戦略、オペレーション、投資に携わった経験を持ち、現代の財務リーダーシップについて、戦略と事業の両面を踏まえた独自の視点を備えています。

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