決済トークナイゼーションとは、カード番号などの決済情報を、意味のない文字列(トークン)に置き換えて守る技術です。事業者の手元にはトークンだけが残るため、万一システムが攻撃されても、カード番号そのものは盗まれにくくなります。この記事では、仕組み、暗号化との違い、EC事業者のメリット、日本の指針との関係、導入方法を説明します。
決済トークナイゼーションとは?仕組みは?
決済トークナイゼーションは、カード番号(主口座番号、PAN)をトークンに置き換え、元の番号を安全な保管領域で管理する仕組みです。カード情報を安全に管理する責任は、トークナイゼーションサービス側が担います。
取引の流れは次のとおりです。
カード会員が購入手続きでカード情報を入力します。カード表面に記載された長い番号(PAN)もここに含まれます。
カード情報が、一意のトークンに置き換えられます。Airwallexなどの決済事業者の決済処理サービスの一部として、自動的に行えます。
事業者のシステムには、トークンだけが保存されます。元のカード情報は、トークナイゼーションサービスの安全な保管領域に置かれます。
アクワイアリング銀行(加盟店と契約してカード決済を処理する銀行)とカードネットワークは、取引の処理に必要なカード情報を扱えます。
同じ顧客の継続取引では、同じトークンを繰り返し使えます。
トークンが第三者に盗まれても、それだけではカード番号を取り出せません。元の番号との対応は保管領域の中にだけあり、必要な取引の処理時にだけ元の情報に戻されます。
トークナイゼーションと暗号化は何が違う?
暗号化は、データを読めない形に変換し、届いた先で鍵を使って元に戻す方法です。トークナイゼーションは、データを元の番号から計算できない別の文字列に置き換える方法です。トークンだけを見ても元の情報は推測できません。

EC事業者にとってのメリットは?
最大のメリットは、カード情報を自社で持たずに済むことです。あらゆるEC事業者に共通する主なメリットは次のとおりです。Apple PayやGoogle Payなどの電子ウォレットも、取引の保護にトークンを使っています。
情報漏えいと不正のリスクを減らせる
カード情報を自社で保存しないため、漏えいや不正アクセスで盗まれる情報が減ります。顧客の信頼にもつながり、チャージバック(カード利用者が支払いに異議を申し立て、売上が取り消されること)のリスクを抑える助けになります。
購入手続きの手間を減らせる
同じトークンを再利用できるため、リピーターは購入のたびにカード情報を入力し直す必要がありません。ワンクリック決済のような素早い購入手続きを、安全性を保ったまま提供できます。
継続課金に向いている
サブスクリプション型の事業では、トークン化した顧客データを継続決済用に保存できます。カード番号を保管するリスクを抱えずに、毎月の決済を続けられます。
セキュリティ基準への対応が楽になる
カードの取り扱いに関する国際基準PCI DSS(カード会社が定めた、カード情報を扱う企業向けのセキュリティ基準)は、トークナイゼーションを有効な手段と位置づけています。実際のカード情報を自社システムに置かないため、保存や管理に関する要件への対応の負担を軽くできます。
日本の指針とはどう関係する?
日本では、経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン」が、割賦販売法のセキュリティ対策義務の実務上の指針とされています。このガイドラインは、加盟店にカード情報の「非保持化」(自社でカード番号を保存・処理・通過させないこと)を求めています。トークナイゼーションは、カード情報を自社で持たないという考え方に沿った技術です。
同ガイドラインは、原則すべてのEC加盟店に、2025年3月末までのEMV 3-Dセキュア(カード利用時の本人認証)の導入を求めました。2025年4月以降は、セキュリティ・チェックリストに記載の対策(脆弱性対策など)の実施も求めています。
自社が求められる対応の範囲は、契約している決済事業者やカード情報の扱い方で変わります。詳細は決済事業者や専門家に確認してください。
プラットフォームやマーケットプレイスにとってのメリットは?
決済情報をトークンに置き換えると、プラットフォームは利用者と自社の双方を守りながら、決済を円滑に提供できます。
支払管理を簡単にできる: 継続決済用のトークンを保存すれば、利用者が決済情報を何度も入力する必要がなくなります。
情報漏えいから守れる: 購入者と販売者の情報を、漏えいや不正利用から守りやすくなります。
責任範囲を狭められる: 機密性の高い決済情報に直接触れないため、万一の漏えい時も責任範囲を限定しやすくなります。
新しい決済手段に対応しやすい: 異なる決済手段を持つ新しい市場へ進むときや、技術が進化したときにも対応しやすくなります。
導入するにはどうすればいい?
導入は、信頼できるトークナイゼーションサービスの提供事業者と連携し、決済処理に組み込むのが基本です。自社でトークンの仕組みを作る必要はありません。
Airwallexの決済は、主要なカードネットワークと接続し、「ネットワークトークナイゼーション」に対応しています。これは、カード情報をトークンに置き換える処理をカードネットワーク自身が管理する方式です。Airwallexが外部のトークンサービスで生成されたトークンを取り扱うこともできます。
世界の基準にはどんなものがある?
トークナイゼーションに関する基準は、次のように国際的に整備されています。
EMVCoトークナイゼーション・フレームワーク
EMVCoは、世界の決済システムの標準化に取り組む国際的な技術組織です。決済トークナイゼーションの指針と仕様を策定し、基準を満たしたことを示す認証も提供しています。枠組みの主な内容は次のとおりです。
カード情報をトークンに置き換える処理の安全性を確保すること
トークンの生成、保管、送信、期限切れや無効化までの一連の流れ(ライフサイクル)を管理すること
トークンにアクセスし、利用できる者を管理する認証・認可の手続き
トークンを安全性と利用可能性で分類する「トークン保証レベル(TAL)」という考え方もあります。用途や想定リスクに応じて、適したレベルは異なります。
PCI DSS
PCI DSSは、Visa、Mastercard、American Expressなどの主要カード会社が策定したセキュリティ基準です。カード情報を受け付け、処理し、保存し、送信するすべての企業に、安全な取り扱いを求めています。
よくある質問
トークンが盗まれると、カード番号も盗まれますか?
いいえ。トークンは元のカード番号から計算して導けない文字列で、対応関係は安全な保管領域の中にだけあります。トークンだけでは、カード番号を取り出せません。
暗号化とトークナイゼーションはどちらを使えばよいですか?
用途が違い、両方を組み合わせて使うのが一般的です。暗号化は通信や保管中のデータを守り、トークナイゼーションは事業者がカード番号そのものを持たずに済むようにします。
トークナイゼーションを導入すれば、非保持化になりますか?
トークナイゼーションは、カード情報を自社で持たないという非保持化の考え方に沿った技術です。ただし、非保持化として求められる対応の範囲は、決済事業者との契約内容や決済画面の作り方によって変わります。導入前に決済事業者へ確認してください。
継続課金でもトークンは使えますか?
使えます。トークン化した顧客データを保存しておけば、カード番号を保管せずに、毎月の決済を続けられます。
本記事は情報提供を目的としており、法務・規制・税務に関する助言ではありません。個別の状況については、専門家にご相談ください。
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Tilly Michell
Content Marketing Manager
Tilly manages the content strategy for Airwallex. She specialises in content that supports businesses in their growth trajectory.


