経理・財務でAIを活かすには、AIの精度が上がるのを待つより先に、データ、システム、業務の流れを整えておくことが重要です。基盤が整っているチームは、AIが使えるようになった時点で、早く成果を出せます。この記事では、待つことのリスクと、先に整えるべき3つの基盤を解説します。
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AIの精度が上がるまで待つのは、なぜ危ないのか?
待っている間に、データの複雑さと作業のやり方の癖が積み重なり、後から整えるコストが上がっていくからです。
財務・経理の仕事は、信頼できる正確な数字を出すことです。間違える可能性のあるツールを使うことに慎重になるのは自然です。ただ、待つことにもコストがあります。そのコストは、どの管理画面にも表示されません。気づいたときには、追いつくのが難しくなっています。
AIは、少しずつ着実に賢くなるとは限りません。私の観察では、不完全な出力が続く期間の後に、急に使えるようになる場面があります。そのため、精度が十分になるまで待つのではなく、不完全な出力の段階から試しておくことが有効です。
AIは、最初から完璧な状態では届きません。人が確認し、フィードバックを与えることで、その会社の事業に合った出力ができるようになります。
待っているチームは、どんな状況にある?
多くの財務チームでは、取引データ、経費データ、為替の記録が別々のツールにあり、表計算ソフトで突き合わせています。1年半前に作った集計レポートを、誰も触りたがらないという状態も珍しくありません。何を変えるべきかは分かっていても、着手する余裕のある時期を待っている間に、データの複雑さが増していきます。
古い取引先との契約や、変革を決める権限がない階層的な組織、分断されたシステムが重なると、見直しはさらに難しくなります。成長の過程で積み重なった制約が、年々解消しにくくなるのです。
一方、組織が比較的小さいチームには、まだ動ける余地があります。ただし、その余地は、システムが増え、既存のツールを中心に新しい習慣ができ、通貨や拠点が増えるたびに狭まります。
日本の事業者にとっても、他人事ではありません。電子帳簿保存法により、メールやインターネットでやり取りした取引データ(電子取引データ)の電子保存は、2024年1月から対応が必要になりました。紙やメールで回っている業務を整理する機会として、この対応を活用できます。
AIを活かすために、先に整えるべき基盤は?
データ、システム、業務プロセスの3つです。始める前に完璧な状態である必要はありません。まず、現状を正直に評価することから始めます。
1. AIが判断に使えるデータになっているか
AIは、与えられたデータをそのまま信頼します。元のデータが整っていなくても、同じ確信度で答えを返します。取引記録にばらつきがある、勘定科目の使い方にルールがない、複数の通貨の入金が消し込まれていない、といった状態では、正しく見えて間違っている答えが出るおそれがあります。
AIを広げる前に、データを整理し、統合し、入力のルールをそろえておくことが大切です。
2. システムがつながっているか
買掛金、経費、為替、レポートなどが別々のツールにあると、AIはビジネス全体ではなく一部分からしか分析できません。データをつなぎ、「唯一の正しい情報源」(複数のシステムで数字が食い違わない状態)を作ると、AIがより自律的に動けます。
3. 業務の流れが自動化に向いているか
月次決算のたびにCSVをダウンロードして別のファイルと突き合わせ、メールで承認を回している業務に、そのままAIを入れても、複雑さが表に出るだけです。自動化は、既存の仕組みをそのまま拡大します。土台が強ければ効果が広がり、弱ければ問題も大きくなります。
先に、繰り返し実行できて、手順が決まっている業務の形に整えておきます。
AIの時代に、財務リーダーの役割はどう変わる?
分析を自分で行う役割から、分析を実行する仕組みを作り、改善する役割へと変わっています。
たとえば、広告キャンペーンの投資対効果を自分で計算するのではなく、それを実行するAIエージェントを育て、改善することが仕事になります。すでに、書類の取り込み、分類、消し込みをAIエージェントに任せているチームもあります。承認は自動で振り分けられ、例外だけを人が確認します。人の役割は、エージェントが動くための条件や判断基準を決め、見直すことです。
大切な指標は、「変化に気づいてから対応するまでの時間」です。月末の数字の正確さは引き続き重要ですが、変化を早く見つけ、原因を理解し、対応する速さも同じように重要になっています。AIは、データに変化が現れてから、チームが動くまでの時間を縮められます。
今、何から始めればよい?
完璧になるのを待たずに、基盤を整えながらAIを試し始めます。動いて、学んで、仕組みを調整する速さが、個々の出力の正確さと同じくらい重要になっています。
精度が一定の水準に達するまで待つことは、「クラウドはまだ信頼できない」と導入を遅らせた企業と同じ失敗につながります。不完全さに気づいたことは正しくても、待つことのコストを見誤っています。
きれいなデータ、つながったシステム、デジタル化された業務は、財務の基本です。これらを整えることで得られるものは、多くの財務リーダーが想像するより早く大きくなります。
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よくある質問
経理・財務でAIを使う前に、何を整えるべきですか?
データ、システム、業務プロセスの3つです。データは入力のルールをそろえて統合し、システムは互いにつなぎ、業務は手順が決まった繰り返し可能な形にします。完璧に整える必要はなく、現状を評価するところから始められます。
AIの精度が上がってから導入したほうがよいですか?
待つより、不完全な段階から試すほうが有効だと考えます。人が確認しながらフィードバックを与えることで、AIが自社の事業に合った出力を学べるからです。
財務のAIエージェントは何を任せられますか?
書類の取り込み、分類、消し込みなどを任せている例があります。承認を自動で振り分け、例外だけを人が確認する運用も考えられます。
電子帳簿保存法はAI活用と関係がありますか?
関係があります。メールやインターネットでやり取りした取引データの電子保存は、2024年1月から対応が必要です。データを電子で整理する取り組みは、AIが使えるデータの土台づくりにもつながります。
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Justin Yek
Vice President of Finance
Justin Yek was the Vice President of Finance at Airwallex where he led the global finance team. During his 3.5 years in Airwallex, he was instrumental in driving key initiatives beyond finance, including corporate development, new market expansion and financial partnerships. Justin brought a unique perspective to his role, combining a background as a former entrepreneur and software engineer with over a decade of investment banking expertise from Morgan Stanley and Citi.


